犬の社会事情と「柴犬」という犬種の将来を考えて、正確な知識とモラルと責任を持って繁殖を考えてみてはいかがでしょうか。
1 繁殖を考える前に
なぜ仔犬を産ませるのか・産ませたいのか、目的をきちんと持っていますか?
あの人が産ませたから、わたしも・・・、などという考えはあまりに馬鹿げています。子育てゲームではないのです。リセットボタンはありませんよ。生まれた仔犬たち(1頭だけとは限りません)に責任が持てますか?面白そう、可愛いから、せっかく女の子で生まれてきたのだからお母さんにさせてあげたい、子供の情操教育になるから、というのは人間側の勝手な感情で「犬」のことをまったく考えてはいません。
どんな仔犬を産ませたいのか、生まれた仔犬たちをどうしたいのか、将来をきちんと考えた上で柴犬のこと、犬の生態・行動・習性・生理・本能などを十分勉強してから繁殖を考えて下さい。
あなたの柴犬は心身ともに健康ですか?
繁殖者は健康、健全な仔犬を産ませる(作る)義務があるはずです。そのためには親犬になる雄・雌とも、健康で性格の良い犬でなければなりません。交配〜妊娠〜出産〜子育ての約4ヶ月間、母体には大きな負担が掛かります。雌犬はそれに対応できる精神力と体力が十分ありますか?適した体格ですか?(太っている、小さいなどは負担になりかねます)健康の目安は、随時食欲があり活気のある目をしていて活動的であること、病気がちであったり散歩を嫌がるのは健康とはいえませんよね。
遺伝性疾患をきちんと見極めていますか?
太陽膿瘍
仔犬は親犬からの遺伝子を受け継いで生れます。優性遺伝子、劣性遺伝子あるいはホモ型、ヘテロ型などと専門的なことを言えばキリがありませんが、疾患は30〜50%の確立で必ず遺伝するものと考えて下さい。そして、親犬に先天性疾患があるのを承知した上で繁殖をするのは一番許せないことです。たとえ繁殖に使おうとする犬に疾患が現われていなくても先祖が持つ疾患を劣性遺伝子として持っている(キャリアー)場合があります。これが次代に現われる(隔世遺伝)可能性は十分有ります。先祖犬の疾患データが不明でしたらより慎重に交配相手を選ばなければならないでしょう。
あと、極度な怖がり、必要以上に吠えまくる、噛み癖がある、攻撃的である、などという問題行動につながる性格も遺伝しますので考慮す� �必要があります。
がん遺伝子により細胞が異常増殖し発生します。先天的(比較的若い頃にかかる)な癌などは遺伝によるところがあります。また、雄犬に関しては停留睾丸(子犬時に睾丸が体内に留まったままになる)が腫瘍になり癌に発展する可能性があります。 | |
何かを気にするように同じ行動(舐める・噛む・グルグル回る)をずっとし続ける犬、これはストレスによって脳神経系が行動をコントロールできなくなる心の病気です。このような犬は環境によるストレスを過剰に受けやすい性質なのです。てんかん発作も脳の異常から起こります。 | |
肩・股関節・膝蓋骨などの関節異常(脱臼など)は歩行に障害をきたします。腰、膝に力が入らずグラグラする、歩行時に脚が地にしっかり着かないで跳ねるようになる場合、これが先天性のものでしたら子孫にも遺伝します。 | |
柴犬に多く見られる、アトピー性皮膚炎は体内に入る様々なアレルゲンに過剰反応し、かゆみによって皮膚炎を起こさせます。治療が難しく慢性化しますのでやっかいな病気です。 咳の犬 | |
一般に甲状腺機能低下症と言われ、多くの犬に現れるホルモン性障害です。毛が抜けて皮膚の色が黒っぽくなり炎症を起こします。新陳代謝が低下するので元気がなくなります。 | |
進行性(または先天性)網膜萎縮症(5〜6歳を過ぎた頃に症状が発生するようですが、発生前の診断は可能です。)は遺伝性によるものと発表されています。視力障害が進行して必ず失明に至る病気です。 | |
噛み合せの悪さ(オーバーショット・アンダーショット)、歯並びの悪さ、欠歯の有無も遺伝のものと考えられます。歯は骨の形成に関係していると言われます。また、歯は食べる為=生きる為にあるものです。繁殖に際して考慮しなければなりません。 | |
生まれながらの盲目、難聴、血小板異常などは色素細胞の異常から発生します。毛色、目の虹彩や目縁、鼻、肉球の色などの色素欠乏が見られる犬を、変わった毛色だから、面白いブチだからなどと遊び半分で繁殖しないで! *「柴犬学会」参照 |
一般に、遺伝が原因とされる先天性疾患は若年にうちに発生します。愛犬が2歳を過ぎてから繁殖に適した個体かどうか判断するのがよいでしょう。
(ここまでは健全な犬を繁殖するための最低限の知識とモラルです)
血統・犬種を理解してますか?
子猫の発作
「あら!お宅の柴犬血統書付き?うちもよ〜、じゃあ仔犬を産ませたら血統書が取れるわね!」・・・
残念ながら、雄犬・雌犬のオーナーがその犬の登録されている犬種団体の会員で、所有者登録をしていなければ仔犬の血統書の申請は出来ません。(注/雄・雌共同一団体) 日本で柴犬の血統書を発行しているのは、日本犬保存会、JKC、柴犬保存会などがあります。
繁殖者の責任として、繁殖する子犬の登録(血統書を作る)ができるように所有犬が所属する団体の会員になってください。そして会の主旨(日本犬柴犬の質の向上と繁栄)と犬種スタンダード(日本犬標準)を理解し、きちんとした繁殖(作出)計画をたててください。
展覧会を見学しましょう、たくさんの柴犬を見ましょう、愛犬を出陳してみてもいいでしょう。 繁殖を考えるのはそれからでも遅くは無いはずです。
余談ですが、血統証明書を持たない犬(雑種であればなおさら)を販売(利益)の対象にすることは、個人的にその繁殖者または販売者のモラルを疑ってしまいます。これは、そのような犬には値段をつける価値が無い、ということを言っているのではありません。私は仔犬の値段というのは犬自身についているものではなく、血統の確実さ、血統の良さ(心身の健全性)、そして繁殖者の功労に対して付くものと思っています。
2 繁殖をする前に
交配相手(雄犬)を決めていますか?
一般的に交配を申し込むのは雌の所有者のほうです。犬の生態・行動・習性・生理・本能では種の存続のために種族(パック)の中でアルファ雄とアルファ雌のみが子孫を残す権利があります。良い犬を生ませるために良い雄を選ぶことは繁殖の基本です。
お散歩で会う近所の柴ちゃんが仲良しだからお願いしよう、なんて安易に決めないで必ず経験と知識が豊富な柴犬専門のブリーダーに相談して下さい。雌犬とその血統書を見て、遺伝を考慮し、なるべく同じ欠点を持たない血統的に合う雄犬をブリーダーが選んでくれるはずです。
ペットショップでも交配できる雄を所有しているところがありますが、多犬種を扱っていて展覧会などにすすんで参加していないところはその犬種の知識が乏しいことがありますので注意しましょう。
子犬の行き先を探せますか?
生ませた後で「誰かもらってぇ〜!」では無責任です。ペットショップなども素人が繁殖した得体の知れない(血統の分からない)犬を引き取るところはなかなかないでしょうし、ショップから誰の手に渡るか、どこに行ってしまうか分からないことが多いです。この点、交配をベテランブリーダーにお願いすれば子犬の飼い主探しのネットも広がります。
ぜひとも、子犬は繁殖者の手から信頼できる飼い主さんに責任を持って直接手渡していただきたいものです。
雌犬の健康管理はできていますか?
病気はしていませんか?食欲はありますか?活動的ですか?
気をつけなくてはならないのは、交配前にお腹の中の回虫をきちんと退治しておくことです。仔犬は母犬の胎内にいるときに母犬から回虫をもらってしまい、回虫は仔犬のお腹の中が大好きで、そこにたくさん寄生しようとします。そして、回虫をたくさん持って生まれた仔犬は栄養障害をおこすようになります。
その他、獣医院で疾患のチェックや血液検査などをしておくと安心でしょう。
繁殖時期・繁殖適期を知っていますか?
やみくもに雄と雌を一緒に置いて、「さあ!仔犬を作りなさい」と言っても無理なことです。動物には繁殖時期(シーズン)というものがあり、これは雌によって左右されるのです。
普通、雌の繁殖時期・発情は1年に2回、6〜8ヶ月おきにあります。これは陰部からの出血によって確認されます。最初の発情は、早くて6ヶ月齢、だいたいが8ヶ月齢前後のときにありますが、12ヶ月過ぎてからようやく来た〜!という例もあります。この最初の時期で交配させることはお薦めいたしません。母体の保護のため7ヶ月齢に満たない雌の交配、出産は諸畜犬種団体でも認めていません。雄にも別の理由で認められていません。
出血が始まってから10日を過ぎたころに排卵が始まります。これが繁殖適期・交配時期になりますが、一般� ��に14日目を基準に前後2日を交配時期にする人が多いです。もちろん固体差があり、出血から20日くらい経ってから排卵がある例も聞かれます。この時期を見極めるために雌犬所有者は犬をよく観察しなければならないでしょう。
最後に
今一度、あなたのご愛犬の繁殖を考える前に是非ご覧になってもらいたいサイトです。
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